認知症の方に「財布を盗った」と言われたら?介護歴10年の私が現場で学んだ、寄り添いの対応法と心の持ち方を紹介。
「話が通じない」「突然怒られてしまった」──
認知症介護では、こんな悩みを抱える介護職が多くいます。
私自身も、施設での介護の仕事を10年以上続けてきましたが、認知症の方との関わりは今でも難しさを感じる場面があります。
「認知症の方と接するには、どうすればいいのかわからない」
これは、現場でよく聞かれる悩みです。
しかし、認知症について正しく理解し、対応の工夫を重ねることで、少しずつ相手の気持ちが見えるようになってきます。
認知症の方と関わる難しさ
特別養護老人ホーム(通称:特養)で勤務していたときのこと。
ショートステイに入所されたある女性は、アルツハイマー型認知症を患っていました。
物忘れが進行している様子で、入所直後に財布をタンスへしまわれたのですが、そのことをすぐに忘れてしまいました。
そして後になって、「あなたが盗ったんじゃないの?」と私に言われたのです。
もちろん盗ってなどいませんし、そもそもその場所に私はいませんでした。
しかしその出来事がきっかけで、「ここにはいられない」「家に帰りたい」と強い不安を訴えるようになってしまいました。
【工夫1】まずは寄り添う
認知症の方は、「物をしまったこと」や「忘れてしまったこと」に自覚がないケースが多いです。
このため、「自分でしまってましたよ」「私が盗るわけないじゃないですか」と否定的に返すと、逆効果になることがあります。
大切なのは、否定ではなく寄り添いです。
「何を探していらっしゃいますか?」「一緒に探してみましょうか?」と、相手の不安に共感しながら関わる姿勢が大切です。
【工夫2】一緒に探し、ご本人に見つけてもらう
一緒に探すことで、相手に安心感を与えることができます。
このとき、自分が直接財布を見つけて手渡すと「やっぱりあなたが持ってた」と思われてしまうこともあります。
あらかじめ場所の見当がついている場合でも、
「私は洗面所を見てみるので、タンスの中をお願いできますか?」などと声をかけて、
最終的にご本人に見つけてもらえるようにする工夫が効果的です。
【注意点】うまくいかないこともある
どれだけ丁寧に対応しても、必ずしもうまくいくとは限りません。
元々「家に帰りたい」気持ちが強い方や、心配性な方の場合、別の問題へ展開してしまうこともあります。
このとき、「自分がなんとかしなければ」と思い詰める必要はありません。
不安な時や怒っている時に、強く関わられることを望まない方もいます。
他の職員に任せたり、相談員やご家族に相談したりするのも一つの方法です。
一人で抱え込まず、チームで支える意識が大切です。
まとめ:寄り添う姿勢を大切に
認知症の症状は人によって異なり、またその人の性格や背景、生き方によって現れ方も変わってきます。
そのため、「これが正解」という対応はありません。
大切なのは、相手の不安を理解し、否定せず、寄り添う姿勢を持ち続けること。
そして、うまくいかないときには、周囲に助けを求めてください。
📝 寄り添いながらも、頑張りすぎないこと。
その姿勢こそが、認知症の方にとっても、あなた自身にとっても大切な支えになります。
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