今回は、特養で実際に10年働いてきて感じたことを書いていきます。
書こうと思ったきっかけは、「介護の仕事をしている」あるいは「家で誰かの介護をしている」方以外は、”介護”について、イメージしづらいんだろうなぁと感じたことが多かったからです。
それもそのはず…。介護って閉鎖的です。知ろうと思っても、施設内には気軽に出入りできるわけではなく、中でどんな生活を送っているのか見えないからです。「親の介護が必要になった」という状況になるまでは、介護について知るきっかけを掴めない方が多いと思います。
介護って、”介護する人とされる人のふたつしかない”小さな世界なんです。そこには楽しいこともあれば、苦しいことや大変なこともあります。ちなみに、苦しいことのほうが多いです。
介護の世界で頑張っている方も、なんとなく知ってみたい方も、介護のリアルをぜひ覗いてみてください。
それでは本編どうぞ。
📌特養の仕事内容と一日の流れ
まずは、特養の仕事内容について、いくつかの勤務形態とともに解説していきます
🔑勤務形態について
特養の勤務形態には、早番・日勤・遅番・夜勤の4種類があります。
一部では、日勤がない・遅番がないこともあります。施設ごとに多少の違いはあると思います。
私が働いていた特養では、各勤務帯の動きはこんな感じでした。
- 早番:7時~16時のシフト。朝は起床介助と朝食を担当し、午前中は入浴の介助を行い、15時におやつを提供するまで。
- 日勤:9~18時のシフト。午前中は入浴の手伝いをし、昼食を担当。午後は記録の入力や、排泄介助を行う。18時前に夕食の手伝いをして終了。
- 遅番:11~20時のシフト。昼食を担当し、午後は記録の入力や、排泄介助をし、夜は就寝介助をして利用者さんを寝かせるまでを行う。
- 夜勤:16~翌日の10時までのシフト。夕食から担当して、夜間の見守りと巡視を行い、翌日の朝に早番と一緒に朝食を提供するまで。
個人的には夜勤が一番きつかったです。18時間勤務と非常に長く、朝は眠気との戦いでした。夜勤ありのシフトで10年間続け、ある程度夜勤の長さに慣れはしましたが、体力的にも精神的にもきつい仕事であるのは変わりませんでしたね。
特に、夜間は利用者さんが眠っていて穏やかなように見えますが、認知症のある方などは不眠気味の方もいます。
私の担当するフロアは、職員の配置が一人でしたので、何名か同時に動き出すと、もう対応が出来なくなってしまう状態でした。
正職員として働く場合は、基本的には夜勤も込みでの採用でないと厳しいですが、施設によっては夜勤のない働き方を選ぶことも可能ですので、特養で働いてみたい方は問い合わせてみましょう。
📌特養で働くメリット
特養は、要介護3以上でないと入所できない(一部例外あり)決まりがあり、つまりは「必要な介護が多い・重い利用者さん」が集まりやすい施設です。他の有料老人ホームやグループホームなどの施設と比べて、利用者さんのケアが忙しく、手が掛かることが非常に多いです。
”特養は大変”といわれますが、その通りです。考え方を変えて、特養で利用者さんの介護依存度が高く、大変な業務を経験することで、介護について多くを学べると感じる方でないと、メリットを感じにくいかもしれません。
主なメリット(介護関連の知識がつきやすい):
- 終末期ケアを学べる(看取りの経験):終末期ケアをやっているのが特養の大きな特徴の一つです。看取り対応は、他の施設ではあまり受けられない大きな経験と言えます。
- 利用者さんと長く関係を築ける:特養は終の棲家とも言われ、ご逝去されるまで入所されている方が多く、長い間一緒の時間を過ごすことが出来ます。時には家族のように思ってくださる利用者さんもいて、やりがいを感じられます。
- 他職種との連携力が身につく:特養は入所数が多く、施設規模としては大きくなります。そのため、介護・看護・栄養・相談・療法士などの多くの職種が所属しており、連携を取ることが出来ます。
- 公的施設なので経営が安定している:これも特養の大きなメリットです。有料老人ホームなどと違い、国が定めた施設であるため、つぶれにくいので、長く働くことができます。
「特養で働いてみたいけど、自分に合う職場がわからない…」そんな方は、まずは求人サイトで雰囲気をチェックしてみてください。
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📌特養の大変なところと課題
「介護は人材不足」という言葉をよく耳にします。実際に働いている側として、「これはなりたい人が不足するのも分かるな…」と感じてしまうことは多いです。
やることが多くて忙しい → 忙しいから人がやめる → 残った人の負担が増え、さらに辞める人が増える → 人を大量に採用しなければならない の悪循環を繰り返しています。
大変なところを挙げるとキリがないですが、現状をちゃんと伝えたいので、いくつかご紹介します。
- 業務量の多さ:そもそも、単純に業務が多いです。分業してくれる施設もありますが、通常の利用者さんの介助だけでなく、消耗品(オムツなど)の発注や管理、フロアの清掃、利用者さんのリネン交換、委員会の参加、会議への参加など…。利用者さんへの対応で時間いっぱいにも関わらず、間接業務までこなさないといけないため、残業も多くなりがちです。
- 重度の利用者が多く、身体的負担が大きい:介助が必要な場面が多いので、それだけ職員の身体への負担も大きくなります。私も10年の間で、何度も腰を悪くして動けなくなりました。もちろん、身体の使い方を正しく学ぶことで軽減は出来ますが、負担がゼロになることはありません。
- 認知症ケアにおける対応力が求められる:特養の入所者さんの多くは認知症を患っています。要介護3以上の入所条件を満たすのは、認知症があって、介護が必要という方が多いからです。よって、認知症への理解と知識を正しく持っている必要があります。中には矛盾していたり、理不尽な要求をされることがある難しい課題です。
- 看取りケアへの精神的な向き合い:入所者さんと長くお付き合いできることはやりがいのひとつですが、それは最期とも向き合わなければならないということです。看取りケアについての記事▶ 看取り介護の判断基準と減らす工夫とは?特養での実例とともに解説でも書いていますが、喪失感や悲しみとも向き合わなければならず、辛い経験ともなり得ます。
📌特養で働いていて嬉しかった瞬間
私が10年間特養で働き続けられたのは、やりがいや嬉しかったこともあるからです。大変なことや辞めたいと思った時期もありましたが、これらの経験によって、私は支えられてきました。
- 利用者さんやご家族からの信頼:信頼関係を築いていく中で、利用者さんから「あなたがいるからまた来たのよ」と言ってもらえたり、ご家族から「こんなことまでしてもらえてありがとう」「母がいつも職員さんのこと話してくれるんです」などと言ってもらえるととても嬉しいです。”自分自身が、家族や親せきのように感じられる”暖かさがあります。
- 最期を見届ける責任とやりがい:利用者さんがご逝去されるのはとても悲しいことですが、「この方にとって一番いい最期はなんだろう」と考え、その人らしい最期を迎えるために、職員が協力して準備をすることには、やりがいを感じます。
- 人生の先輩として尊敬できる:利用者さんの中には、戦争を経験されていたり、出産・子育て・責任ある仕事など、人生の先輩として尊敬できる点が多いです。たまには自分の相談を聞いてもらったり、アドバイスを頂けることもあり、関わり合いをとても大切にすることが出来ます。私は利用者さんの考え方やどんな生き方をしてこられたのかを聞くのがとても好きでした。
📌特養で働くのに向いている人・向いていない人
向いている人 | 向いていない人 |
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介護について多くの経験をして、学んでいきたい人 | 業務に追われることがあり、体力面が心配な人 |
チームで連携して仕事をするのが好きな人 | 重度のケアに抵抗がある人 |
利用者さんとの関係性を大事にしたい人 | 最期を迎えるにあたり、”死”に向き合えない人 |
📌これから特養を目指す方へ
記事を読んでいただいたらわかるかもしれませんが、特養は重度な利用者さんが多く、責任の重い仕事もあります。
より介護を知りたい!難しい対応について学んでみたい!という前向きな考え方がないと、なかなかできない仕事です。
しかし、特養や介護の業界に限ったことではなく、最初は誰も失敗をしますし、辛い体験をすることはあると思います。
終の棲家として、最期まで支援をしてあげられる環境だからこそ、特養でしかできない貴重な経験もまた多く、やりがを感じることが出来るでしょう。
有料老人ホームや老健、グループホームにデイサービスなど…。介護施設と言っても他にたくさんのジャンルがあります。介護の知識やノウハウを得るという意味でも、特養という選択肢をひとつ、考えてみてはどうでしょうか?
現実として、楽しいことややりがいだけでは語れないのが特養という施設です。ですが、たくさんの利用者さんと出会い、接することで、様々な思いを聞き、自分自身も成長が出来たんじゃないかなと思っています。私は、特養で働いてよかったと思っています。
📌まとめ
特養は「仕事内容が大変だけど、学びも多い」現場です。あなたが介護に興味がある方であれば、きっと成長できる場所となるでしょう。
とくに働くことを考えていないという方は、こういう世界もあって、職員も頑張ってるんだな…。となんとなく感じてもらえたらと思います。
私はこれからも、介護現場の魅力や、あるいはその反対も、リアルを発信していきたいと思っていますので、ぜひご感想やご意見などお待ちしています。
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