介護の現場で避けて通れないケアのひとつが「排泄介助」です。施設によっては、一日の中で一番多い業務となるでしょう。
新人職員だけでなく、経験者でも失敗や戸惑いが起きやすく、利用者とさんの信頼関係にも大きな影響を与える場面です。
特に夜間や急な対応が必要なとき、次のような悩みに直面する方も多いのではないでしょうか。
- 「声かけのタイミングが難しい」
- 「臭いが気になってしまう」
- 「スムーズに対応できず、不快な思いをさせてしまった」
認知症ケアの中で、声かけは特に難しい課題です。
「これが正解」というのはなく、利用者さんの性格や価値観に合わせて工夫する必要があります。ここに、誘導ができる職員とできない職員の個人差が生まれてしまうことがあります。
声掛けに失敗してしまうと、そもそもトイレに行ってくれない・オムツを交換させてくれないといった事態になってしまうのです。
こうした場面で重要になるのが、「排泄介助の基本的な考え方」と「具体的な工夫」です。
筆者も特別養護老人ホームで10年以上の勤務経験がありますが、失敗と試行錯誤の連続でした。
✅ 失敗を防ぐために知っておきたいこと
この記事では、以下のようなポイントに注目してお伝えしていきます:
- 利用者への声かけの工夫とタイミング
- 臭いや皮膚トラブルを防ぐための環境整備
- 介助者自身の心構えと負担軽減法
それぞれ重要なポイントです。この中に難易度の違いはあれど、優先順位はなく、どれも大切です。
✅ さらに詳しく知りたい方へ
実際に特養で働く中で学んだ「排泄介助のリアルな成功事例と失敗事例」について、以下の記事で具体的にご紹介しています👇
👉 排泄介助の成功と失敗から学ぶ!介護現場で役立つ実践ノウハウ
筆者が現場で実際に行っていた排泄介助のやり方についてや、明日から使える実践的なヒントをまとめています。ぜひご覧ください。
また、皆さんの悩みや不安な点などがあれば、一緒に考えさせてもらいたいと思っていますので、ご連絡お待ちしております。
🚽 排泄介助の基本と現場で役立つ実践ノウハウ
排泄介助は、単なる身体的なケアではなく、利用者さんの尊厳や信頼関係に直結する、非常にデリケートで重要な支援のひとつです。
毎日行う業務なので、慣れやルーティーン化してしまい、利用者さんをないがしろにしてしまってないでしょうか?
職員にとっては何十回も対応してきたことだとしても、認知症を患っている方であれば、「この人初めて変えてくれるのに…」と感じてしまうこともあります。そこまで配慮できているでしょうか?
📌 なぜ排泄介助は難しいのか?
現場に立ったことのある方なら、多くの共通の悩みに直面したことがあるでしょう。
- ✅ トイレへの声かけのタイミングがわからない
- ✅ 失禁などのトラブルが起きたとき、対処に戸惑う
- ✅ 汚染物の処理や臭いにストレスを感じる
もともと、私自身も排泄介助が苦手でした。介護職員として働くと決めたときも、他人の排泄物に対して抵抗感があり、高齢者と関わるのは好きだけど、仕事としてやっていくのは無理じゃないかと葛藤したほどです。
最初は尿を見るのも嫌でしたし、慣れるのには時間がかかりました。その中で、失敗を重ねながら一つずつ学んできました。
いいことかどうかはわかりませんが、排泄物であっても慣れていき、抵抗感も少なくなっていきます。
実際に経験から得た「排泄介助の成功・失敗の違い」と、「現場で役立つ具体策」をお伝えします。
🗣️ 声かけのコツとタイミング
排泄介助は、声かけでが大切です。いきなり始めて利用者さんにストレスを与えてしまうことがないよう気を付けてください。
人に見られることに羞恥心や不快感を抱く方も多く、心理的な配慮が求められます。
💡 ポイント
- 「○○さん、そろそろトイレに行きますか?」と“選択肢”を与える
人間は誰でも、一方的に言われると腹が立ちます。こちらのペースを押し付けるのではなく、相手に選んでもらえるよう、声かけをしましょう。これは導入の基本です。
- 同意を得たうえでの介助することで、信頼関係が深まる
同意を得ることも大切です。この人にやってもらおう・手伝ってもらおうと思っていただくことで、その職員に対しての信頼が生まれます。
- 日常の会話の流れで自然に声かけすることで、抵抗感を和らげる
排泄介助を行う際に、一生懸命になりすぎて無言になってしまうと、相手にとっては怖いです。余裕がでてきたら、日常会話などを自然に盛り込んであげることで、利用者さん自身も安心できます。
⏱ タイミングを見極める観察力
失禁を防ぎ、快適な生活を支えるには「タイミング」が重要です。
以下のような観察がヒントになります。
- ✅ そわそわしている様子
- ✅ トイレの方向に目を向ける
- ✅ 手でお腹や下腹部を抑える
- ✅ 食後・就寝前・起床後などの習慣的な時間
- ✅ 介護記録から見えてくる排泄時間
これらのサインを見逃さないように意識することで、排泄の自立支援にもつながります。
利用者さんの排泄時間はバラバラです。排泄介助の記録を正確につけることで、それぞれ利用者さん毎に排尿の多い時間帯を知ることができます。決まった時間に排泄介助をするのではなく、利用者さんのタイミングに合わせることは、職員の負担減になり、失禁回数も減るのでオススメです。
📌 排泄時の体位と介助動作のポイント
安全で快適な排泄介助のためには、「体位」や「動作」も重要です。
- 利用者さんに合わせて便座の高さや角度を調整する
- しっかりと足がつくように補助具を活用する
- 職員はボディメカニクスを活かした介助動作を意識する
💡 ボディメカニクスについてはこちら → 介助がラクになる!ボディメカニクスの基本と現場での活用法
体に負担が少なく、介護者も疲れにくい姿勢をとることで、職員と利用者さんの双方にとって安心な介助環境が生まれます。
🧴 臭い・皮膚トラブルの予防策
排泄介助におけるストレス要因のひとつが「臭い」や「皮膚のただれ・褥瘡リスク」です。
✅ 臭い対策
- 換気扇の使用と、介助が終わったら窓を開け換気を行う
- 排泄介助を行った後、すぐに処理できるよう必要な物品は多めに準備し、余裕を持っておく
しっかりと換気をして、臭いを取ってあげることは重要です。利用者さんはそのあともお部屋で過ごされますし、ご家族が面会に来られることもあります。しっかりと配慮しましょう。
✅ 皮膚トラブル予防
- 拭き取りの残しがないよう、おしりふきなどでしっかりふき取る
- 排泄介助の時は、毎回、観察・保湿を徹底する
- 必要であれば、スキンケア製品の活用(バリアクリームなど)
排泄介助は、普段見られない陰部や臀部などの皮膚状態をチェックするチャンスでもあります。皮膚のただれや褥瘡のリスクをしっかりと確認し、保湿などの予防に努めましょう。
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👉 排泄介助の成功と失敗から学ぶ!介護現場で役立つ実践ノウハウ
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📝 まとめ|排泄介助は“技術”と“心”のバランスが大切
排泄介助は、「ただのお世話」ではありません。
技術と配慮の積み重ねが、利用者の尊厳を守り、介護者自身のやりがいにもつながる大切なケアです。
特に、技術面は数をこなせば慣れていくものなので上達していきますが、配慮面は慣れると作業のようになってしまい、声かけや利用者さんのペースに合わせるといったことが、おろそかになってしまいがちです。
「下の世話をしてもらっている…」利用者さんにとっては、恥ずかしさや申し訳なさなど、色んな感情があります。
これから排泄介助を経験していく方も、もう慣れているという現役の方も、今一度、どこまで配慮できているかを考えてみてほしいです。
一言声をかけるだけで、印象はガラッと変わります。昨日まで出来ていなかったことも、今日から始めればいいのです。
明日から、あなたの現場で「ひと工夫」がきっと役立つはずです。ぜひがんばってみてください。
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