今回は介護施設において重要な役割を果たしている、「委員会」について解説していきます。
委員会により役割や重視される事柄が変わってきますのでぜひ参考にしてみてください。
🏠 介護施設における「委員会」の存在とは?
介護施設では、安全で質の高いケアを提供するために、さまざまな「委員会」が設置されています。利用者さんの体調の管理をするものから、施設の運営にかかわるものなど、それぞれが重要な役割を担っています。
現場で働く職員にとっては、「また委員会か…」と思うこともあるかもしれませんが、委員会は意義をもっており、施設運営の土台を支える非常に重要な仕組みのひとつです。
この記事では、介護施設における委員会の目的や種類、現場での活用法について、現場経験者の視点で解説します。
ちなみに、私が勤めていたのは特養なので、他の施設では”こんな委員会があるよ”などがあればぜひご意見をください。
🧩 委員会の主な目的とは?
介護施設の委員会には、大きく3つの目的があります。これらの目的に応じて、委員会が発足されています。
大きい施設では、10個以上の委員会が設けられていることもあります。
- 利用者さんのリスク予防と管理
→ 事故・感染症・虐待などのリスクを最小限に抑える - サービスの質の向上
→ ケア内容や対応の質を定期的に見直す - 職員間の情報共有とチーム力向上
→ 組織的な取り組みを支え、職員の意識向上を促す
📝 主な委員会の種類と役割
あくまで一例ではありますが、以下に代表的な委員会とその活動内容をまとめます。
① 感染対策委員会
- 感染症の予防・拡大防止のマニュアル作成
- 嘔吐物処理や手指衛生の徹底確認
- 年間を通じた予防策の啓発(インフル・ノロなど)
感染症は種類が多く、特に高齢者は罹患(りかん)するリスクが高いです。未然に感染症を防ぐため、または発症してしまった場合に拡大するのを防ぐためにできることを、委員会内で協議します。
特にコロナやインフルエンザなどは施設で流行るリスクが高いです。対応策について委員だけでなく、職員もしっかりと周知をしてある必要があります。必ずマニュアルがあるはずなので、確認しておきましょう。
求められるもの:感染症発生時の迅速な対応
② リスクマネジメント(事故防止)委員会
- 転倒・誤薬・誤嚥の防止策の検討
- ヒヤリハットや事故報告の集計と対策会議
- 介助方法や環境面の改善提案
事故(リスク)を未然に防ぐことを目的とした委員会です。
利用者さん本人の事故だけでなく、職員の介助ミスなどによっても事故を起こしてしまう危険性があります。委員会では過去に起こってしまった事故の集計をし、対策や改善案を出すことで次回のケアへ活かしていきます。
求められるもの:事故に対する、客観的な視点からの要因分析
③ 身体拘束適正化委員会
- 拘束が必要なケースの検討と記録管理
- 拘束を減らすための代替策の模索
- 利用者さんの尊厳を守るための職員研修
こちらの委員会では、身体拘束が適正に行われているか、安易に拘束行為をしてしまっていないかを協議します。身体拘束は必ずしもダメなものではありませんが、厳しい要件を満たしており、かつ医師やご家族の同意が必要です。
また、正しい身体拘束ではなく、誤った知識で利用者さんの行動を制限してしまっている場合などは、虐待のおそれもあるため、身体拘束適正化と虐待防止の観点から慎重に判断する必要があります。
求められるもの:安易な行動制限への危機管理
④ 虐待防止委員会
- 虐待の兆候への早期対応
- 職員のメンタルケアと労働環境改善
- 利用者・家族との信頼関係構築策
虐待を未然に防ぐため、またはケアの質を向上させ虐待のない施設を作るための委員会です。
どこからが虐待でどこまでは未遂なのか難しいと思われがちですが、グレーに感じたものは、虐待です。虐待防止の委員会が正しく機能していないと、不適切なケアがなんとなく行われてしまっていることが多いです。
委員会でグレーと思われる対応についてしっかりと協議をし、クリーンな接遇を薦めていく必要があります。
求められるもの:利用者さんの目線に立ち、ケア方法について判断する力
⑤ 給食・栄養委員会
- 嚥下状態や好みに応じた献立検討
- 食中毒防止や衛生管理の指導
- 調理スタッフとの連携強化
利用者さんの食事のメニューや食事の際の様子など、”食全般”を取り扱う委員会です。
献立のメニューを考えるために利用者さんの嗜好品についてアンケートを取ってみたり、食事の様子を観察して提供する食事の形態などについても協議をします。
また、感染症委員会と協力をして、食中毒などの感染リスクについても注意をします。
求められるもの:食への関心や利用者さんの嚥下(えんげ)能力の観察
🧑🤝🧑 委員会が現場にもたらすメリット
- ✍️ トラブルを未然に防げる
→ 定期的な見直しでミスを防ぐ:委員会で担うものは、体調に関わるものから、事故や病気などをあらかじめ予測して対応するものなど、生活に関わる要素が多いです。 - 📚 職員のスキルや意識が向上する
→ ケース共有や勉強会(研修)を通じて成長できる:委員会の議事録や勉強会などを通し、委員会内での取り組みについてを外部とも共有することができます。担当する人以外も知識を深めることができ、施設全体の底上げにも期待ができます。 - 🔄 多職種の連携が強化される
→ 介護士・看護師・相談員などの連携がスムーズに:委員会には多部署・多職種が関わるため、それぞれの目線から意見を出し合うことができます。
🔍 現場でありがちな課題
現場では「会議だけで終わってしまう」「形骸化している」と感じる声が多いのが現実です。
委員会の中には、施設運営上必要なものがいくつかあり、自発的に設けられているとは限らないからです。
必要性や、委員会を通してこういった施策をしていきたいという目的がなければ、内容はまとまりづらいものです。
その場合は、
- 議題を現場視点に絞る
- 役割を明確にする(進行係・記録係)
- 成果を共有し、職員全体に周知する
といった工夫が効果的です。
また、なぜ必要なのか?施設をどうしていきたいか?を考えて委員会に参加してみると有意義なものへ変わります。
今後は、各委員会について掘り下げた記事も書いていこうと思っていますので、ご意見やご感想をお待ちしております。
📝 まとめ|委員会は「面倒」ではなく「現場を守る盾」
委員会は、職員が快適に働き、利用者が安心して暮らせる環境を整えるための仕組みです。
形だけで終わらせず、実際のケア現場に即した議論と改善こそが、委員会の本来の役割です。
今回は5つの委員会を紹介してみましたが、他にもまだまだ施設によって様々な種類があります。
これらの委員会が正しく機能しているからこそ、利用者さん・職員のどちらも安全が守られるといって過言ではありません。正しい知識を持つために施設側が努力しているあかしでもあります。
これから就職・転職を考えている方も、施設選びのポイントとして「委員会活動がしっかりしているか」はチェックすべき項目といえます。
掘り下げてほしい、または詳しく知りたい委員会などあれば、ぜひご相談ください。
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