今回は、熱中症に関する具体的な対策を解説していきます。
暑い日々が続いていますが、特に高齢の方は熱中症のリスクが高いので、注意していただければと思います。
🔆 高齢者にとって“熱中症”は命に関わるリスク
まずはじめに、高齢になると体温の調節機能が低下しているため、熱中症にかかりやすい特徴があります。
気温の変化などに気が付きにくく、夏場であってもエアコンや扇風機がなくても大丈夫だと思って過ごしてしまう方がとても多いです。
特に介護施設では、複数名の利用者が同じ空間で過ごすため、個々の異変に気づきにくく、よく観察して早期の対策が重要です。
筆者も特別養護老人ホームで10年以上勤務していましたが、夏場は「水分摂取」や「室温管理」に毎年神経を使っています。
利用者さんの居室を訪ねてみると、「冷房が寒い」とエアコンを消してしまったり、夏なのにセーターなどを着こんでしまわれる方もいます。体温調節の機能が低下しているため、暑さを感じにくくなっているんです。
熱中症は脱水症状など様々な弊害をもたらします。命に関わるため、施設介護でも在宅介護でも特に注意が必要と言えます。この記事では、介護現場で実践できる熱中症予防の工夫や声かけのコツを、具体例を交えて解説します。
✅ 高齢者の熱中症リスクが高い理由
- 暑さや喉の渇きを感じにくくなる:体の調節機能は、加齢とともに低下します。高齢の方は暑さを感じ取りにくくなる特徴があります。
- トイレを嫌がり水分を控える人が多い:トイレに行くのがおっくうな方や、人に手伝ってもらうことに抵抗がある方などは、水分を控えることでトイレの回数を減らそうと考えるケースもあります。
- 持病(心疾患・糖尿病など)で水分制限がある:糖尿病の方などは、摂取する水分に制限がある場合があります。
- 自発的にエアコンを使わないケースが多い:暑さを感じにくいことで、「まだ大丈夫だろう」と考えてエアコンを使わない方もいます。
⚠ 実際にあったケース:熱中症が原因で転倒・骨折、そして入院
ある夏の日、特養に入所していたAさん(80代・女性)は、水分摂取を拒む傾向があり、エアコンを嫌がる方でした。
「喉が渇いていない」「冷房は寒い」と、高齢の方では結構なあるあるです。
Aさんの居室を訪ね、「そろそろお食事ですよ」と声掛けをしたところ、Aさんは立ち上がった際にふらふらし、そのまま倒れてしまいました。
熱中症になり、ふらついた状態で立ち上がり転倒という事故です。汗を大量にかかれていました。
結果として大腿骨を骨折し、救急搬送後に入院となりました。
後の診断では軽度の熱中症症状が見られ、脱水・体力低下によるふらつきが転倒の引き金になったと考えられました。
このケースのように、熱中症は直接的な発症以外にも、「二次被害」を引き起こすリスクがあります。
特に高齢者は、骨折=寝たきり=QOLの低下につながることもあるため、小さな体調変化の見逃しが大きな事故につながることを職員全体で共有しなければなりません。
Aさんは大腿骨の骨折で長期の入院となり、退院するころには歩行の能力が低下し、車いすを使う生活になってしまいました。
🌡 介護現場で実践したい熱中症対策5選
① 定時の水分補給声かけをルーティン化
とにかく水分が大切です。熱中症だけに限ったことではありませんが、1日の水分量を記録し、できれば1,000mlくらいは飲んでいただいた方がいいです。
「今飲みましょう」ではなく、「みんなでお茶の時間ですよ」と、習慣にするのがポイントです。
💡1回あたり100〜150mlをこまめに、1日6〜8回を目安に。
② エアコンと扇風機を併用し室温管理
高齢者の中には「冷房嫌い」な方が多いです。しかし、目安として室温が28℃を超えないように常に気を付けましょう。
どうしても嫌がってしまう方には、直接風が当たらないように、扇風機やサーキュレーターの設置も効果的です。
直接冷房の風が当たると「寒い」と感じてしまう方は多いです。
③ 利用者の“汗”や“顔色”をこまめにチェック
熱中症や脱水状態になっていても、顔を見ただけでは気が付かないことがあります。
私が現場で介護をしていたときも、気がついたら大量に汗をかかれていて、すでに脱水症状も引き起こしてしまっていたということがありました。
特に気温が高い日は、異常に汗をかいている、顔が赤い・ぐったりしているなどのサインを早期に察知できるよう気にかけましょう。
バイタル(血圧・脈拍・体温など)や顔色の観察が重要です。早期発見が、重症化を防ぐ大切なポイントです。
④ 利尿作用のある飲み物は控えめに
お茶やコーヒーなどは、利尿作用があり、おしっことして水分が排出されてしまうおそれがあります。水分補給として適さないこともあるので、可能なら麦茶や経口補水液、塩分を含む飲料を意識して提供しましょう。
昔、夜は必ずビールで晩酌をするという利用者さんがいましたが、3缶も飲む方で、夜中に脱水状態になってしまうということがありました。お酒はあらゆる感覚が鈍くなってしまうため、特に注意が必要です。
⑤ 食事に“水分と塩分”を含ませる
水の提供だけでは限りがあることもあります。飽きてしまったり、1回の食事でそんなに摂取できないという方もいます。
味噌汁やスープ、冷やしうどんなど、食事にも水分は含まれているので、汁物の提供なども有効です。
「食欲がない」利用者さんには、ゼリー飲料などがおすすめです。甘味があると喜んで摂取してくださる方もいます。
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🗣 声かけの工夫|高齢者が水分をとりたくなる声かけ
介護においては、水分をいかに取って頂くかに頭を悩ませている方も多いと思います。
利用者さんには自分のペースがあるのでただ「お水を飲みましょう」と言っても拒否されることもあります。
以下のような日常会話に混ぜた声かけが効果的です。
- 「○○さん、冷たい麦茶にしましょうか?」
- 「今日ちょっと暑いですね〜。のど乾きませんか?」
- 「みんなで乾杯しましょうか」
利用者さんは「指示」ではなく「選択肢を与える」声かけのほうが受け入れやすい傾向にあります。
こちらのペースではなく、相手のペースとなるよう、自発的に選んでもらえるように声掛けするのが重要です。
🧴 こんな熱中症サインに要注意
しつこいようですが、熱中症は早期発見が一番大切です。これから暑い日が増えるので、常に状態を観察しましょう。
日差しが多い日中に多いと思われがちですが、夜間もリスクは高いです。寝汗をかく方や、エアコンをタイマーにして寝る方などは特に注意が必要です。
- 顔が赤い、ぼーっとしている
- 会話の反応がにぶくなる
- 手足が冷たい・震える
- 吐き気・頭痛を訴える
表情に出にくいという方も、会話がいつもと少し違うかな…。と思ったらすぐにバイタル測定をしましょう。また熱中症が疑われる場合には、涼しい場所へ移動し、水分摂取、必要なら救急要請も視野に入れましょう。
📝 まとめ|熱中症は“予防”が何より大切
高齢者は体温調節機能が低下しているため、自覚症状が出にくく、重症化しやすいのが熱中症の特徴です。
特に施設や在宅での介護の現場では、熱中症に限らず「少しの異変」に気づく観察力と、日々の環境管理が重要となります。少しでも不安に感じたら、必ず誰かに相談しましょう。
予防のためには、日々、以下のポイントを常に意識しておきましょう
- ✅ 定期的な水分補給(時間を決めて声かけ)
- ✅ エアコン・扇風機の適切な活用
- ✅ 室温・湿度のこまめな確認
- ✅ 食事や睡眠による体調管理
- ✅ 高温時の屋外活動は避ける
また、「ちょっと元気がない」「顔色が悪い」といったサインを見逃さず、
「声かけ+観察+記録」の徹底で、重症化のリスクを減らすことができます。
利用者さんが快適で安全に夏を乗り越えられるよう、職員一人ひとりの意識と連携が欠かせません。
ぜひチームで情報を共有しながら、対策を実践していきましょう。
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