「親の介護を在宅で行うか、施設に任せるべきか」を悩んでいるみなさんへ。
「費用は?負担は?みんなはどっちを選択しているのか?」など、何を基準にしていいか戸惑っていませんか?
結論から言えば、「どちらが正しい」ではなく、「あなたの状況に合う選択肢を知ること」が重要です。この記事では、実際の利用割合を元に、冷静かつ納得感のある選択ができるようにサポートをしていきます。ぜひ参考にしてみてください。
具体的に、以下のような内容をお届けします:
- 最新の統計データから見る在宅介護と施設介護の利用割合
- それぞれを選んだ家庭が重視したポイント
- 主介護者が後悔しないために押さえるべき判断基準
読み終える頃には、「うちはどうすべきか」が自然と見えてくるでしょう。あなたの選択を後押しする、現場目線のリアルな情報をお届けします。
📝在宅介護と施設介護の利用割合【2025年最新】
高齢化が進む日本において、介護の在り方は年々注目を集めています。特に「在宅介護」と「施設介護」のどちらを選ぶかについては、どの家庭でも悩まれていると思います。
決めるためには、まず実際の利用割合やその背景にある社会的・経済的要因について知っておきましょう。本章では、2025年現在の在宅と施設それぞれの介護利用割合を明らかにしながら、全体像を整理していきます。
最新データで見る介護の全体像
2025年の厚生労働省の調査によれば、介護保険制度を利用している要介護者・要支援者の総数はおよそ660万人を超えました。そのうち、在宅介護サービスを受けている人は約410万人、施設サービスを受けている人は約140万人という数値になっています。
これにより、介護の割合は【在宅介護3:1施設介護】という構成になっており、現時点での主流は、在宅介護であることがわかります。また、制度上も「可能な限り自宅で生活を続ける」ことが推奨されており、行政や地域社会の支援体制も在宅寄りです。要するに、国は在宅介護を推しています。
在宅介護と施設介護の利用比率とは
実際に比率を数字で見ると、在宅介護の利用者は全体の約7割を占め、施設介護の利用者はおよそ2割、残りの1割は介護予防などのサービスに該当します。これは単なる傾向ではなく、そうなるように制度が組まれているからです。つまり「在宅介護と施設介護」の割合には、国の介護方針が大きく反映されています。
しかし、特養で10年務め、施設介護を見てきた私の経験からいえるのは、要介護度が上がればそれだけ在宅介護が難しくなり、柔軟に施設介護を検討するべきだということです。そのため、数字だけを見て”在宅か施設か”を判断するのではなく、要介護者の状態や家庭の事情も踏まえて考えてください。
過去からの推移とその背景
2000年に介護保険制度が導入されてから現在に至るまで、在宅介護の割合は少しずつ増えています。初期段階では施設介護の利用が目立っていましたが、医療費の抑制や高齢者の尊厳を重視するといった社会的ニーズの変化を背景にして、国は包括的なケアシステムを整備するようになったのです。
その結果、地域による支援や訪問サービスの充実が進み、多くの高齢者が「住み慣れた場所で最期まで暮らしたい」という希望を叶えられる環境が整いました。このように、在宅と施設どちらで介護を行うかというのは、時代ごとの政策や価値観の変化が色濃く反映されます。
🏠在宅介護が選ばれる理由と現実
在宅介護は多くの家庭で第一に検討される選択肢といえます。なぜかというと、高齢者本人が「できるだけ自宅で過ごしたい」と願うケースは多く、家族にとっても住み慣れた環境で見守れるという安心感があるからです。
まさに本人の希望を叶える理想の形であるといえますが、裏側にはさまざまな事情と苦労が存在します。本章では、在宅介護が選ばれる背景やそのメリット・デメリット、さらに家庭の中で浮かび上がる課題と活用できる支援について掘り下げていきます。
在宅介護のメリット・デメリット
在宅介護の最大の利点は、本人が望むペースで生活を送れるということです。また、見慣れた家で過ごすことは、高齢者の心身の安定にもつながります。そして、家族と好きなときに触れ合えることも大きなメリットといえるでしょう。まさに在宅介護は、「自分らしさ」を大事にして生活を送ることができます。
一方で、主介護者の肉体的・精神的な負担は大きくなります。その理由として、介護の知識やスキルが十分ではない家族にとって、排泄や食事、入浴といった介助を長期にわたって続けることが困難だからです。そのため、介護者は仕事と生活の両立が難しくなり、介護離職という選択を迫られるケースも少なくありません。
つまり、高齢者にとっては一番望まれている選択肢と言えますが、介護者にとってはハードルが高いのが在宅介護です。
家族の生活や仕事との両立の難しさ
在宅介護を選んだ家庭では、「できるだけ自分たちで」と考える傾向が強いのですが、介護が長期化することで精神的に疲れてしまうことが多いです。
介護は終わりがありません。いつ何が起きるかもわからず、延々と必要な介助をこなしていく必要があります。そのため、共働きの世帯やシングル世帯などでは、仕事と介護の両立に限界を感じてしまうことが多いでしょう。
そして、家の中に介護用ベッドや手すりを設置するためのスペースが確保できないといった物理的な問題も生じます。高齢者が歩けなくなってしまったとき、施設であれば車いすを使うことができますが、家ではそういうわけにもいきません。
こうした負担が積み重なると、「やはり施設に頼るべきかもしれない」という判断に傾いていきます。つまり、在宅介護には、家族の生活と介護のバランスをどう取るかという根本的な課題があることを忘れないでください。
在宅介護の実現には支援サービスをおすすめ
在宅介護には厳しい課題も多いですが、高齢者の希望を叶えるための大切な選択肢です。もし在宅での支援を選ぶのであれば、各種サービスの活用を積極的に考えましょう。サービスを活用すれば介護者の負担はかなり減らすことができます。
まずは訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)の利用を検討しましょう。訪問介護は自宅へ介助の手伝いにきてくれ、通所介護は通うことで介助を受けられるサービスです。特に、入浴介助などの身体的な負担が大きいものは、プロに任せましょう。
その他にも、訪問看護、訪問リハビリテーション、ショートステイなど、利用できる制度は多岐にわたります。これらを組み合わせることで、介護者の負担は確実に減ります。また、介護保険サービス以外にも、地域包括支援センターによる生活相談や、自治体が提供する家事援助、買い物代行なども利用可能ですのでチェックしてみてください。
在宅介護だからといって、自分一人で負担しようとしてはいけません。介護はマラソンのようなもので、長期間になることを見据える必要があります。介助を続けていくためには、【プロに来てもらう、プロに相談する】ことは必須です。また、訪問や通所など、第三者にも見てもらうことで、自分だけでは気づきにくい体調や表情の変化などに気づけることもあります。
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🍀施設介護が選ばれる背景と課題
在宅介護に限界を感じたとき、多くの家庭が次に検討するのが施設介護です。要介護度の高い高齢者や、家族の事情により在宅での対応が困難になった場合、施設は重要な受け皿となってくれます。
しかし、施設介護には費用面や入所までの手続き、施設の種類によるサービスの違いなど、慎重に比較をして検討する必要があります。ここでは、「施設側」の実情に焦点を当て、筆者の”10年間施設で勤務した”経験をもとにメリットとデメリットについてそれぞれ解説します。
施設介護の利点と費用面の実情
施設介護の大きな利点は、24時間体制でケアが行えることにあります。あなたが働いているときも寝ているときも、職員が交代制で見守りをしてくれます。また、急な体調の変化があったときでも、看護師や医師と連携して迅速に対応ができるため、家族にとっても安心した生活を送れるようになるでしょう。
ただし、その分コストもかかります。たとえば、特別養護老人ホームでは月額8万〜15万円前後で利用可能ですが、民間の介護付き有料老人ホームになると、入居一時金や月額利用料を合わせて数十万円になることも珍しくありません。さらに、施設ごとの料金体系は複雑で、食費・居住費・サービス費が別計算になる場合もあり、事前の見積もり確認を必ず行いましょう。
入所までのハードルと待機問題
施設介護を希望しても、すぐに入所できるとは限りません。特別養護老人ホームは要介護3以上の高齢者が対象となるため、比較的軽度の要介護者はそもそも対象外となります。※ただし、要介護2以下でも入所できる例外アリ
特別養護老人ホームは施設の中では費用面が抑えられる傾向ですが、実際の申し込みから入所までに半年〜数年を要することもあります。安価な施設や、設備・ケア内容が充実している施設は競争倍率が高くなっています。
一方で、民間の施設は空きがある場合もありますが、費用負担が大きく、長期的な運用を想定すると家計への圧迫は避けられません。こうした事情から、施設介護を検討する際は、緊急時用と長期利用を分けて候補を持っておくなど、段階的な準備が必要です。施設利用の実情は、決して単純な「安心」だけでは語れません。
施設の種類ごとの特徴と選び方
介護施設と一口に言っても、その種類や目的には大きな違いがあります。
特別養護老人ホーム(特養)は、費用を抑えつつ重度の介護に対応できる点で人気がありますが、前述のとおり入所基準が厳しく、待機者も多いのが現状です。
介護老人保健施設(老健)は、リハビリを中心とした短期利用が想定されており、在宅復帰を目指す人には適した選択肢といえます。
介護付き有料老人ホームは、個別のケアや多様なサービスを受けられる反面、費用が高くなりやすいという側面があります。
🍀介護施設のそれぞれの違いについてはコチラ
よって、施設選びは、介護度、予算、立地、サービス内容などを総合的に比較し、見学や説明会への参加を通じて慎重に判断するべきです。特に、入所一時金などがある施設は初期費用が高額になりますので、サービスの内容までしっかりと確認をしておきましょう。
🌟利用割合の地域差と世代間の意識ギャップ
同じ「介護 在宅 施設 割合」といっても、全国一律ではありません。実際には地域ごと、さらには世代ごとに大きな差が存在します。地方と都市部では利用傾向が異なり、また高齢者本人と主介護者とで理想と現実にズレが生じることも少なくありません。本章では、こうした地域的・世代的なギャップを紐解き、なぜそれが生まれるのかを考察していきます。
都市部と地方で異なる介護選択傾向
都市部では核家族化が進み、近隣に親族がいない家庭も多く、結果として在宅介護の継続が難しくなる傾向があります。しかし、施設の利用率が高まる一方で、施設不足や待機者の増加が深刻な問題となっています。
一方、地方では家族や親戚のつながりが残っている場所が多く、在宅介護の割合が高くなる傾向にあります。しかし、医療機関や支援サービスが都市部ほど充実していないケースもあり、「地域の助け合い」が前提となる場面も少なくありません。つまり、「在宅・施設の介護割合」は、その地域における支援インフラや家族構成によって大きく左右されるということです。
高齢者と主介護者で違う「理想と現実」
高齢者は、「最期まで自宅で暮らしたい」という希望を持っている方が多いでしょう。これは複数の調査でも一貫して見られる傾向であり、在宅介護を選びたいという意識は根強いものがあります。
しかし、実際にその介護を担う主介護者の立場に立つと、話は変わってきます。生活や仕事との両立、精神的・身体的な負担を強く感じる場面が多くなります。そのため、「施設に入ってもらった方が安心できる」という現実的な判断をするケースが少なくありません。また、このような価値観の違いは、親子間や配偶者間のすれ違いを生みやすく、介護方針をめぐる葛藤や摩擦の原因にもなりやすいです。
介護 在宅 施設 割合という数字の背後には、こうした「誰の視点で見るか」による意識の違いが反映されています。だからこそ、介護の選択は一方的な決定ではなく、本人と家族の相互理解と話し合いを前提とするべきです。
地域包括ケアシステムの導入状況
国が推進する地域包括ケアシステムは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供することを目指す仕組みであり、特に在宅介護を後押しする重要な基盤となってくれます。しかし、このシステムの整備状況は自治体によって差があり、導入が進んでいる地域では在宅介護の質と継続率が高くなる傾向にあります。
逆に、導入が遅れている地域では、在宅での支援が不十分であり、結果として施設介護への依存度が高まることもあります。つまり、地域包括ケアの体制が整っているか否かが、その地域における「介護 在宅 施設 割合」に直接的な影響を与える要素になっているのです。
📊介護の選択で後悔しないために知っておきたい判断軸
介護の選択に「正解」はありません。しかし、「納得できる選択」は存在します。介護 在宅 施設 割合という統計は、社会全体の傾向を示す一方で、各家庭の個別事情や価値観とは必ずしも一致しません。だからこそ、最も重要なのは「自分たちにとって最善の選択肢」を見つけることです。本章では、後悔しないための判断軸を提示し、介護の分かれ道に立つすべての方に向けたヒントをお伝えします。
利用割合から見える“選び方”のヒント
全体の7割が在宅介護を選んでいるからといって、必ずしもそれが「正しい」わけではありません。大切なのは、割合に引きずられず、自身の環境・介護者の状態・家族の体制をもとにした選択をすることでしょう。在宅を選んだ家庭の中にも、途中で施設介護に切り替えたケースは少なくなく、その多くは「無理をしすぎた」ことが理由にあげられます。よって、自分たちの現状に合った形を見極める姿勢こそが、後悔しない介護選びの第一歩といえます。
「自宅で看取る」ことの現実と覚悟
高齢者本人の希望として多い「自宅で最期を迎えたい」という願いには、実際には多くの準備と覚悟が必要です。医療機関との連携、夜間の対応、急変時の判断など、看取りに関する現実的な課題はたくさんあります。個人で対応していくのは、たとえ介護職を経験した人であっても、非常に難しいです。
👉看取りケアについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参照ください。
・特養の看取りケアとは?介護職員の私が10年の経験で学んだ“感情との向き合い方”
・特養での看取り期における家族対応の工夫と当日の動き|エンゼルケアを含めた現場のリアルを語る
・特養の看取りケアの流れとは?家族対応・職員の動き・現場の実情を10年の経験から解説
在宅看取りに対応した訪問診療医や、24時間対応の訪問看護ステーションなど、体制が整っていれば実現可能なケースもありますが、それでも家族の心理的な負担は大きくなります。「看取る」ことへのイメージと実際のギャップを理解した上で、在宅か施設かを選ぶことが大切ですのでよく考え、また地域サービスで相談して決めましょう。
専門家のアドバイスを受けるタイミング
介護の選択を家族内だけで抱え込むことは、精神的にも判断面でも大きな負担となります。そんな時こそ、専門職の意見を取り入れるべきです。
たとえば、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員は、介護が必要な人の状況に応じて選択肢を具体的に提示してくれます。特に、介護保険の認定が済んだ段階、あるいは状態が変化したタイミングは、介護について考える機会と捉えておきましょう。
また、介護経験者の声を聞くことも大きな助けになります。ネットや書籍、自治体主催の介護セミナーなどを通じて、多様なケースに触れることで、「我が家にとっての正解」に近づくことができるでしょう。
介護 在宅 施設 割合という社会的な指標をヒントにしつつ、最終的には「自分たちにとっての納得解」を探し出す——その姿勢が、介護という長い道のりを乗り越える鍵になります。
最後に、私個人としては、可能な限り在宅介護を続けることが望ましいと思っています。たくさんの施設介護をしてきた中で、やはり利用者さん本人にとっては家と家族が一番だと感じました。
しかし、介護の仕事をしてきたからこそ、介護者の苦労も分かります。在宅が一番であることに変わりはないでしょうが、デイサービスを使ってみて一日は介護を休む時間を作ったり、ショートステイに預けて3日間旅行に行ってみるなど、介護サービスを利用すれば在宅介護にも負担を減らす方法はたくさんあります。
質問なども受け付けておりますので、まずは皆さんも、家族の介護をどうするのか考えてみてください。
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