「特養での看取りケアって、どういう流れで進むの?」
「家族が呼ばれるタイミングって?誰が判断してるの?」
介護施設に家族を預けていると、万が一のときのことが気になるものです。
また、介護職として働き始めたばかりの方にとっても、看取りの場面は不安の連続で、何をすればいいのかわからない方も多いと思います。
今回は、特養で10年間勤務し、数十名の看取りケアに関わってきた経験から、「実際にどんな流れで看取りケアが進んでいくのか」を、現場目線で詳しくお伝えします。
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✅ まずはじめに、看取りケアの流れについて
✅ ステップ1:医師の診断と「看取り期」入りの判断
基本的には、医師(嘱託医や担当医)の診断により、看取りケアが必要と判断された場合に始まります。
※緊急時など、例外アリ。
食事や水分の経口(口からの)接種が難しくなり、栄養が取れない場合に、延命治療をするか、看取りケアを始めるか判断することとなります。
✅ ステップ2:家族への説明と同意
施設から家族へ、利用者さんの状態を連絡して状況説明を行います。
看取りケアには、ご家族(キーパーソン)の同意と「看取り介護計画書」の作成が必要となります。
※同意を得られてはじめて、看取りケア開始です。
✅ ステップ3:ケアの実施と多職種連携
施設全体で連携し、各部署が看取りの方針を共有します。
介護・看護・相談・栄養などの部署が、それぞれの目線で必要なケアを提示します。
医師の指示を仰ぐこともあります。
✅ ステップ4:大切な4つのケア
- 身体的ケア:看取りケアが始まるころは、栄養不足になり、寝ている時間も増えるため、褥瘡(じょくそう)のリスクが高まります。よって、体をふいてあげたり、体位を変えるなどを行い、褥瘡予防に努めます。また、必要時に排泄介助や整容の介助なども行います。
- 精神的ケア:看取り期の利用者さんの苦痛緩和のために、安楽な姿勢で寝てもらったり、音楽をかける・写真を飾り寂しくないようにしてもらうなどの工夫も大切です。利用者さんが自分らしく最期を迎えられるような環境づくりを行いましょう。
- 社会的ケア:ご家族の不安を取り除いてあげることも大切です。相談員が主となり、今後の流れや手配するべきものなどの助言を行います。
✅ ステップ5:最後の対応とご家族の見送り
看取りのケアが進んでいくにつれて、利用者さんは緩やかに体力が落ちていきます。バイタルのチェックを行い、脈や血圧が下がる・あるいは取れなくなっていくと、危ないと判断されご家族へ連絡をします。
呼吸停止・心肺の停止を医師が確認して初めて、ご逝去となります。
最後にエンゼルケアとして、利用者さんの顔をきれいにし、髪をととのえてさしあげるなど旅立ち後の処置を行います。
ご家族が葬儀社を手配し、施設へ迎えがこられたら、ご出棺となります。
📝 マニュアル通りにはいかない現場のリアル
- いつ連絡するかが難しい:
最期を迎えるまでに数日~数週間生きられる方もいますが、具体的に「あと何時間で」と判断するのは個人差があり、とても難しいです。バイタルサイン(血圧や脈拍)などの記録をもとに予測されるものなので、家族への連絡が遅れ、間に合わないことなどもあります。
→ 解決策:看取りの連絡があった場合は、こまめに面会できる環境を。後悔することがないよう、顔を合わせる時間をなるべく設けるのがいいでしょう。 - 職員への負担も大きい:
私の体験談としても書かせていただきましたが、長くかかわってきた利用者さんの最期は、職員にとっても辛いものがあります。感情的になり過ぎないよう注意が必要です。
→ 解決策:感謝の気持ちをこめて、最期まで丁寧にケアをしましょう。 - 医療行為の限界と、苦痛緩和の難しさ:
看取り期に気を付けなければいけないのは、やはり褥瘡です。栄養が足りず、体位の交換もできないため、どうしても発生のリスクは高まります。
→ 解決策:医師や看護師と相談・連携を密にし、体位交換の時間を設定する・エアーマットの導入をするなど、褥瘡の防止に努めましょう。
🔚 まとめ
看取りケアには、施設が定めるマニュアルがあります。
ですが、そこでは語りきれない“人”の営みそのものの難しさがあります。
最期の時間をどう支えるか――
それは、介護職として関わってきた全ての積み重ねが生きる瞬間だと思います。
利用者さんの看取りケアを行う際は、その方と過ごした時間を思い出し、何をしてあげられるか、を考えることが良いケアにつながります。
もしあなたが介護職として不安を感じているなら、まずは「どんな流れで進むのか」を知ることが、自信につながるはずです。
次回は、「看取り期における家族対応の工夫」や「看取り当日の具体的な動き」についてもお伝えします。
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