看取りケアで家族にどう寄り添うか悩んでいませんか?
利用者さんにとってもご家族にとっても、最後の思い出作りとなる大切な瞬間ですね。
本記事では、介護施設での看取り期における家族対応の工夫と、最期の当日に職員が行うべき具体的な対応について、10年の現場経験をもとに詳しく解説します。
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🕊️ 看取り期における家族対応の工夫と、当日の具体的な動き
はじめに
看取りケアは、責任の重い仕事です。介護職員として長く働いていくことになれば、何度も経験します。
また、職員だけでなく、利用者やそのご家族にとっても心身に大きな負担がかかる時間です。一番大切なのはメンタル面のケアと言えます。
そのため、介護士や看護師が果たすべき役割には、「ケアの質」だけでなく「心の寄り添い」が求められます。
もちろん、看取りに向かって状態の落ちていく利用者さんに対して、ケアの質を保つのは大切ですが、利用者さんを取り巻く環境(ご家族や我々職員一同)を整えることが非常に大切です。
この記事では、筆者が特養で実際に行っていた看取り対応の経験をもとに、
- 看取り期におけるご家族への対応について
- 看取り当日の動きや注意点など
- 利用者さんとご家族にとって悔いのない時間を過ごすための支援
についてお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてください。
👪 看取り期におけるご家族対応の工夫
🔹 1. しっかりとした説明を
看取りケアを経験したことがある職員であれば、”あとどれくらい利用者さんが頑張れるのか”という想像がつく場合もあります。もちろん、はっきりと何時ころに~というのは分かりませんが、「あと数日かなぁ…」とわかるときがあります。
ですが、ご家族の場合はほとんどの方が看取りというものを知りません。「あとどのくらい持つのか」「最期の瞬間に間に合うのか」といった不安を抱えています。
利用者さんの近くにいる存在として、以下のような点を、医療職と連携しつつ、あらかじめお伝えすることが重要です。これが介護職員に求められる入口の部分です。ここを伝えることが出来ないと、ご家族はとても不安になってしまいます。
💡説明をする際のポイント
- 呼吸の状態や意識の有無
- 食事・水分摂取が減ってきていることの意味
- バイタルサイン(血圧・脈拍・体温など)の具体的な数値
説明をする際は専門用語を避けましょう。呼吸が浅くなっていく。食事や水分の経口摂取(口から入れること)が難しくなってきている。血圧などが下がってくる。と、利用者さんの変化をご家族にお伝えします。
これらの一連の流れを話し、「こうなることは自然なことなんですよ」とご家族にちゃんと伝えます。少しずつ最期の時間が迫っていることを、ご家族に理解してもらうのです。
🔹 2. “寄り添い”ではなく、“受け止め”の姿勢を
「寄り添いましょう」がもちろん一番の理想ではありますが、現場ではときに対応が難しいこともあります。
ご家族によっては、怒りや混乱をぶつけてくるケースもあります。私は、泥酔した息子さんが施設内で暴れてしまったシーンに遭遇したこともあります…。きっと、さらにひどいエピソードを持っている方もいるでしょう。
それくらい、死への向き合い方は人それぞれ違っていて、難しいです。
職員は毅然とした態度で、感情を受け止めるのがいいでしょう。介護に従事している皆さんなら、「傾聴」という言葉をたくさん聞いてきたと思います。コレを使います。
「もっとできたことがあったんじゃないか」と後悔や自責をするご家族も少なくはないです。泣いてしまうのも当然です。
こうした言葉に、反論したり励ましたりするのではなく、まずは共感しながら黙って聞く時間も必要です。
🔹 3. “最後の時間”を家族の形で過ごしてもらう
私個人の意見ですが、看取り期は「できるだけ面会を多く」ご家族にとってもらいたいです。ですが、中には距離感を大事にしたいご家族や、ずっと直視しているのが辛い方もいらっしゃいます。
もちろん面会を強制はせず、選択肢として以下をご案内します。※あくまで目安です。施設内の面会ルールを参照してください。
- 夜間の付き添いを希望される場合に寝具を提供する:余っているリネンなどを貸し出します。
- 家族写真の持ち込みや音楽再生の許可:写真を飾って差し上げる、音楽を流してあげるなどはとても大切です。最期にお部屋で一人はとても寂しいです。
- 手を握ったり、話しかけたりするだけでも良いと伝える:ご家族のぬくもりに触れられることが、利用者さんの安心・安楽につながります。職員からぜひアプローチしてあげましょう。
ご家族にも看取りケアの支援をしてもらうことで、最期に対する後悔を減らすことができます。
🕯️ 看取り当日の具体的な動きと配慮
🔹 1. 職員同士の情報共有と役割分担
申し送りや臨時のカンファレンスで、利用者さんの状態と対応方針を確認しておきましょう。それぞれの部署に役割があるので、”あとどれくらいなのか”は必ず共有します。※こちらも施設ルールがあると思いますので、役割に関しては目安として、確認ください。
- 看護師:バイタルの確認と、症状の緩和を主に担当する
- 介護士:体位交換や口腔ケアを行い、利用者さんの楽な姿勢を
- 相談員:各種の手続き、ご家族の対応
- 管理者:死亡確認後の関係機関への連絡と手配
🔹 2. ご家族への連絡と到着までのフォロー
急変時はできるだけ早く連絡し「今すぐ来てください」と伝えるかどうかを看護師と連携して判断します。
ご家族が遠方の場合は、到着までの時間を見越して、利用者さんが苦しまないよう、姿勢や表情などを整える配慮も大切です。
🔹 3. 最期の瞬間の環境づくり
家族が間に合った場合には、以下のような支援を行います。
- ティッシュやおしぼり、飲み物の準備
- スタッフは少し離れて、静かな空間を作る
- 時計やモニターの音が気になる場合は調整
職員として最期までケアを行いますが、家族が「その人の人生を見送る」時間を守ることが最優先です。
中でも、時計の音や雑音が気になってしまうケースもあるので、そこまで配慮できるとなおいいです。看取りケアでバタバタしてしまい、なかなかそこまで気が付かないことが多いです。
🔹 4. エンゼルケアと最初の言葉が重要
ご逝去の確認後は、丁寧にエンゼルケアを行い、以下を心がけます。
- お顔まわり・お洋服の整え
- ご家族への「ありがとうございました」「お疲れさまでした」の声がけ
- ご家族が泣けるような空気を作る
“どんな最期だったか”は、その後の家族のグリーフケアにもつながります。ご家族が過ごす最期の時間のために、最大限の配慮をしましょう。
📝 まとめ
看取りケアとは、「死と向き合う」ことも大切ですが、介護職員としてみれば”最期に良い思い出をご用意してあげる”ことが一番大切だと、私は感じています。
状態が落ちていき、利用者さんに対する細かいケアや気にしなければいけない点は増え、非常に職員も気を使います。
ですが、自分の人生を精一杯生きてこられた利用者さんのために、最期は自分が出来る最大限の配慮を使ってあげてほしいと思っています。
介護施設において、職員がどう動き、どう言葉をかけるかで、ご家族の記憶は大きく変わります。
最後の時間が“温かい思い出”として残るよう、施設職員の私たちができることはたくさんあります。
大変な仕事ですが、自分が行ってきた看取りケアについて改めて考えてもらいたいなと思います。
これから看取りを経験する方、今まさに対応している方の一助となれば幸いです。
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